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気道戦士 喉頭癌ダム

タバコの吸いすぎから喉頭癌ステージ4でシャント法手術を受けました。声帯摘出、放射線治療、抗癌剤・・・。これから手術を受ける人、治療の後がつらい人。私の体験や工夫が、何かのお役に立てばうれしく思います。

§ 味覚のない世界

正直言って、こんなことを書くべきかどうか?ずっと悩んでいた事です。

3月玄関の花
お見舞いの花・・・僕には、どうも似合いませんねぇ(笑)


放射線治療で「味覚を失う」事は、以前にもチラッとは書きましたが
どんな風に<失う>のか、どの程度<失う>のか?
そして失うと<どんな感じ>なのか?具体的には、ほとんど書きませんでした。

世の中には「知らないほうが幸せなこと」や
「事前に知らせないほうが上手く行く事」も数多くあります。


極度の苦痛が伴う話や人生の喜びが阻害される話。
そんな「不利益があるなら、治療を受けない」と、治療を拒否されかねない話。
そして、他人から見れば「ちょっとした障害」と考えられがちな「些細な障害」?の場合。

・・・まぁ、こんなところでしょう。
僕自身、手術をしたらどうなる?手術後の生活は?なんて
手術前にはそれどころじゃなくって、気が付いたらベッドの上・・・でしたから
「痛い」と言っても後の祭り。まぁ後は回復するだけ・・・でしたから
手術は喉元をこういう具合に切り開いて・・・などと余り聴かされない方が
まぁ、幸せだと思いましたしね(笑)。

※それにしても、両耳の根元から根元までぐるりと「Uの字型」に
よくもまぁ切っていただいたもので、気管も声帯も隣りのリンパ節も甲状腺も
周りの筋肉組織も脂肪も、根こそぎごっそりと、よくも取って頂いたもので(笑)
そんなこと、後で聞いたから問題なく手術出来たけれど、
事前に効いていたら、娘は気絶の、僕は手術拒否・・・なんて事はさすがに有りませんが
それなりにビビッってしまったことと思いますね。


そして、手術後の「放射線治療」。
もちろん、味覚を失うが・・・半年か1年後には回復する。
唾液は出なくなるが、こっちは残念ながら一生治りません。
まぁ「人工唾液」と言うのも開発されてますから・・・などと
一応のインフォームド・コンセントはしていただきました。

看護士長さんから、今のうちに美味しいもの食べておきなさい・・・
とのアドバイスもいただきました。


でも本当はそれがどういう事なのか?
正直ピンと来てはいなかったのですね・・・。

何しろ「喉頭癌」ですから、「今日明日の命」とは言いませんが
癌を治療できるかどうかの話ですから
自分のいのちと、食事の楽しみとどっちが大事なんですか!という事ですが、

治療後の「長い長い生活時間」を考えると
やっぱり、先輩患者としての実感インフォームドコンセントくらいは
ちゃんとお伝えしておかなくては・・・と、思うわけです。

●そこに思い至った経緯は、以下の通りです。

先日、さる放射線専門医の先生から、励ましのコメントをいただきました。
3月11日(黒い小物の項)ですから、バックしてご覧ください。
とってもうれしいお便りでしたが、その中に気になる一節があったのです。

▼以下、その一節です。

放射線治療後が大変なので、放射線治療を受ける前に、
「美味しいお寿司や料理を味わえるのは、今だけかもしれないので、
思い残すことのないよう、気合入れて食べて来てください」というのですが、
大抵の人は、治療中に初めて理解できるようになられるようです。


●その通りなんですね。ピンと来にくいけど
食べ物が「心から美味しい・・・」と感じられるのは、もう最後の食事なんです。

僕自身は、いつもレシピを書いてるような「食い意地の張った」人間ですから
手術前に、なじみの店に「しばしのお別れ」を告げに通い倒しましたから(笑)
・江戸前寿司 握り各種
・知る人ぞ知る 温かい握り寿司 混ぜ・混ぜ・トロ・鯛・アジ棒
・豆腐百珍料理が売り物の 豆腐料理専門店
・料亭、小料理、割烹、各一店:お任せコース&アラカルトで。
・うなぎ専門店 肝焼き、うざく、う巻き、うな重の上、肝吸い一式
・天麩羅専門店 季節のお任せコース+アラカルト
・関西風おでん専門店、「関西炊き」一式+雑炊
・インド料理専門店 カバブ・ティッカ・ナン・カレー3種・マンゴアイス(笑)
・パスタの名店、カルボナーラ、ボンゴレビアンコ、ペンネ、ミラノ風カツレツ、他
・串カツとオムライスの名店 串カツ、コロッケ、オムライス
・蕎麦屋 3軒:鴨なんば、敦盛蒸篭、天なん蕎麦、わりご蕎麦
・うどん屋 3軒:天釜うどん、生醤油うどん、おじやうどん
・四川料理、広東料理、ハルピン料理各専門店。
・すき焼きの有名店 鴨鍋専門店、鴨の串カツ屋さん・・・

・・・一体何軒行ったやら(笑)ですから、大して思い残すことも有りませんが、
癌だし食欲も無いし・・と1~2軒しか行かなかった方のために
もう少しちゃんと説明してあげれば・・・との思いもありました。


●放射線治療を終えて、鼻からいに通した流動食のチューブを抜いた時
僕には、味覚というモノが「まったく」ありませんでした。
手術後、あんなに美味しかった「お粥」が、塗り壁の土を食べてるような味・・・

先生にいかがですか?と聴かれて
「世の中に、あんなマズイモノがあるんでしょうか?」
と、思わず毒づいてしまいました(苦笑)。

その上、刺激物に対する極度の過敏症。
胡椒が効いているから・・・と、ポテトサラダ、ソース、ケチャップなどが
辛くて涙が出て、口中がヒリヒリして食べられないのです。

●人は眼にみえる障害、頭で考えて「大変そうな」障害には敏感です。
目が見えない、耳尾が聞えない、しゃべれない、手足が不自由・・・。
でも、目と耳以外の感覚器の障害にはどうでしょうか?


ヒトには5感があります。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚の5つですね。
これは哺乳類にはと言い換えてもいいくらい原点的な感覚です。
声帯を摘出すると、鼻の中の空気が動かないため、嗅覚を失います。
そして、放射線治療では味覚を失います。
・・・つまり、香りも味も無い食事を一生続けることになるわけですね。
(もちろん、ある程度回復はしますが、全部ではありません)

そして、抗がん剤治療は、指先などの皮膚感覚も鈍くして行きます。
早い話、5感のうち3感が不自由になるわけですね(やれやれ)

視覚と聴覚を失うことは、ヘレンケラーの話などで想像に難くないですね。
でも、残りの3感についてはどうでしょう?


たとえば触覚はどうでしょう?
猫だって犬だって、愛情表現に体を擦りつけてきます。
可愛いですね。こっちも気持ちいいものです。
でも、分厚いスキー手袋をして体に触れても心地よい感覚でしょうか?

香りの無い松茸って、エリンギと変わりませんね。
平目と鯛の区別が付かない刺身、
ジューシーな肉汁の旨さも何も無いハンバーグ
醤油の焦げた香りが「食欲をそそらない」おこげ
単なる「熱いだけ」のそばつゆ、鴨の出汁、ラーメンスープ
色でしか区別の付かないビーフシチューとクリームシチュー・・・。

皆さん、こんな食事が半年も一年も続くんですよ!

そして唾液の出ない食事は、円滑な咀嚼を阻害し、口内の衛生を損ないます。
つまり、食べ物はクチの中のあっちこっちにくっついて、ちゃんと噛めないし
歯の汚れはいつまでも取れずに、虫歯を誘発します。
(普通は、唾液が強力な消化作用で溶かして清潔さを保ちます)

それでも、愚痴一つ言わず、前向きにレシピなどを書いてる僕は
偉いのか、バカなのか?時々は嫌になります(苦笑)。

※ちなみに、どうやって料理を作ってるかと言いますと
以前の感覚で、味付けの塩梅を「少し足りないくらい」で調合して
家内や娘に「味見」してもらって、その意見に従って調整します。
数ヶ月を経た現在では、
自分の舌と、健常者の舌の差も、大体の勘が働くので
僕には少し足りないが、普通はこんなもんか?と言う具合で
何とかいけるようにはなりましたが、
出来たものは、りんごの酸味が効いていて旨い!とか
ふきのとうの香りが立っていて、なかなか美味しい・・・ヒット作!
などと、評してもらわないと「本当のところ」はわかりません。
              ●
以前の経験から、こうすれば多分こういう香りと味になるはずだ!という
勘を頼りに作っているわけです。
※当然、「はずれ」もあります・・・ブログに書かないだけですね(笑)
              ▼
これ以上書くと「愚痴っぽく」なるので、書きませんが
味覚と嗅覚、そして触覚は、視覚や聴覚よりも以前に発達した
生物としての本能的かつ原初的な<悦びと官能の感覚>です。

そりゃ、命の方がはるかに大切ですから、放射線治療はちゃんと受けてください。
でもね、最後に食事なんですから
さすがに「僕のように食べ歩きなさい」・・・とは申しませんが
やはり「ちゃんと味わって最後の食事を味わう」事を心がけてください。



3月玄関UP

●とはいえね!味覚は何とか「戻る」と言えば「戻ります」よ。
それは、僕のレシピを見ての通りですが、努力はやっぱり大切です。
どの程度戻って、どんな希望が持てるかなどは
各レシピの合間に書いている「余談」から読み解いてください。

放射線治療から、約1年。
自身の味覚はともかく、美味しい料理の自信だけは、何とか取り戻せたようです。


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2009/03/18/Wed 20:00:00  病気/CM:6/TB:0/
new こごみの胡麻豆腐 / MAIN / パジャマはお邪魔運動 old

COMMENT

  from - いちご
記事になさるかどうか、、、葛藤がおありになったことも理解できる、
深い内容ですね。
自分が同じ立場になってみて初めて分かること、
(そうならないと分からないこと)って、多いですよね。。。
想像が及ばない世界だけに、お医者さまから事前にいくら説明を受けたとしても、、
突っ込んだ質問をしたり、覚悟をするにも限界があるような。

非パジャマのお話も、心に留めておきます。

「食べたい」と思う気持ちがあるうちは、まだまだ大丈夫なのかなぁ?
なんて、自分のことを振り返って、思ったりもします。^^

食い意地、万歳?!^^♪
2009.03.19-07:56/いちご/URL/EDIT/
いちごさま:  from - 癌ダム4D
食欲があるうちは絶対大丈夫ですよ。
特に病後は、体力が落ちてるので、食欲が増します。

手術後、放射線を当てる前の僕は、喉に穴があいているのに食欲旺盛で
病院食のマーガリンは不味いので、帝国ホテルのマーガリン買って来いに始まり
ウーロン茶亀甲卵を作れ・・・の、ブリーとモツァレラとミモレット買って来いの
どこそこの鰻を折に詰めて、某ホテルのエスカルゴが食いたい・・・と言いたい放題。
Xmasには病院にブッシュドノエルとオードブルセットを届けさせるような
アホぶりでレオ像子もいつも満杯でしたが、

さすがに、放射線治療後は食欲もなく、こりゃもうアカンのかなぁ・・・などと
考えたほどでしたけど、
退院すれば、ホラ店頭にいろんなものが並んでるじゃないですか。

「食べたい」いや「絶対に治って食べてやる!」・・・という訳で今日に至る。
まさに食い意地万歳ですね。

明日は休日なので、久々に派手なレシピ書きます!
2009.03.19-21:53/癌ダム4D/URL/EDIT/
  from - Shibano
わたしも「何があっても三度のメシは食べるように」と
育てられましたので、つらいときでも食欲をなくすこと
はありませんでした。あるいはへこたれた時こそ食べる
ように自分に言い聞かせています。

動物の生命力の根源は食べることですから、その
意味では癌ダムさんの発想は正しいと思います。

それにしても、この記事の内容は経験した人でなく
ては書けないことなので、実にためになります。
2009.03.20-10:28/Shibano/URL/EDIT/
ああ  from - とんび
本当に食の喜びと言うものが、どれだけ私を支えてきたことか!
私は今回大腸がんが見つかり、ネットを検索したところ、腸閉塞が怖いから繊維質のものは食うなだの、味覚が変わる人もいるだのと書いてあり途方にくれたものです。
さらにバセドウ病で昆布及び海藻全般、魚、ホルモンはご法度!なんて食事制限を出されて真っ青に。好きなものが食べられないなんて、なんで?
結局のところ回避でき、今は美味しく食べ放題しております。(←もっと大切に食べようよ)
ちなみに術前は「痩せろ」と言われたにも関わらず、これでもかと好きなもの食べました~。

癌ダムさんのブログの真摯さに、胸を打たれます。
それでいながら面白いこともいっぱい書いてある!
勉強も出来て、前向きになれる、そんな素敵なブログだと思います。

って、読書感想文になってしまいました~。
2009.03.21-02:59/とんび/URL/EDIT/
Shibano先生:  from - 癌ダム4D
力強い援護射撃、ありがとうございます!
そうですね。人間って、食べないとダメな動物です。

僕自身。食べる事としゃべる事をなくしたら何が残る・・・という人間でしたから
その両方を奪われたことは、そりゃまぁ大変なショックではありました。

でも愛では地球は救えないかも知れないけれど
飯で僕は救われる?いやきっと地球も救えるはず(笑)
ホント、なくしてみないことには、見えないものも一杯ありますね。

さて、人類の文化は、視覚と聴覚への依存度があまりに高く
また、そうであるが故に、その他の「三感」を軽視しすぎるきらいがある。

そしてまた、その「三感」、香しい、心地よい、美味しい、は
「三歓」:喜びの感覚でもある。
ヘレンケラーは、資格と聴覚は失っていたが
残りの三感を研ぎ澄ましていたからこそ
「人に感動を与えられるヒト」に慣れたのではなかろうか?
そして、その「二感」のみに頼るTVやCFのなんとそこの浅い事か・・・。
(まぁ、僕の職業でもあるわけですが・・・苦笑)

文化人類学的視点でも、一度取り上げていただければ
うれしいテーマではあります。

それにしても、戦士に取り上げていただいてから
ブログのアクセス件数が、ワンランクアップしたような・・・。
そういう意味でも、ありがとうございます。

2009.03.21-22:57/癌ダム4D/URL/EDIT/
とんびさま:  from - 癌ダム4D
やめてくださいよ。

とんびさんに、そんな風に「マジ」に褒められると
穴があったら入りたくなっちゃいますよ(笑)

姐御!食事制限、回避できて本当に良かったですやんすね!
なんて、ブログの文脈から勝手に「姐御肌」に決め付けちゃってますが
そんなの失礼ですよね、あねさん・・・じゃなくって(失礼)

コホン、さて僕の同級生にも現在2人ほど大腸がんのヤツがいて
これが揃いも揃って、酒好きの話し好き・・・その昔はタバコ好き・・・。
で、2人とも「食欲がなくて」苦しんでいるので、
「食べるのが好きな」、そして「美味しく食べられる」とんびさんは
凄く幸せだと思います。(作ってくれるダンナもエライ!拍手)

ブログ、また書きますから
好きな料理、食べたい食材、好きだけど不満な料理など
リクエストしてください。

満身創痍で、味覚はボロボロお、喉から食物もこぼれるけど
まだ、色に対するこだわりはうせてはいませんから、
きっと、普通ではないレシピ、まだまだ書けると思います。
2009.03.21-23:29/癌ダム4D/URL/EDIT/

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 内緒です♪

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