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気道戦士 喉頭癌ダム

タバコの吸いすぎから喉頭癌ステージ4でシャント法手術を受けました。声帯摘出、放射線治療、抗癌剤・・・。これから手術を受ける人、治療の後がつらい人。私の体験や工夫が、何かのお役に立てばうれしく思います。

§ 人は相槌を打たないと、しゃべってくれない。

しゃべれないと大変困るのが電話ですね。

声帯を摘出して「しゃべれない」人間に「電話」してくるヤツも、
あのなぁ、返事でけへんのやけど・・・ですが(笑)
それはさておき

人は相槌を打たないと、しゃべってくれません。
一言しゃべって、「ハイ」とか「うん」とか返事があるまで、次をしゃべろうとはしません。
そして、しばらく無言の後「もしもし・・・」「聞こえてますか」
挙句に最後は「もしも?し」と大声で言って、電話を切ってしまいます。

あのなぁ、しゃべられへんちゅーて、言うとるやないか
・・・ええ加減にせ?よ!とでも言いたくなります。

入院中、家族からの電話には、事前に取り決めをしておいて
相槌を打つ代わりに、受話器をコンコンと叩いていました。
「今日は夕方に行く」「○○さんからお見舞いを頂いた・・・」
電話って、案外と一方的なメッセージが多いものです。
「買って来て欲しいものがあればメールして・・・」「明日の予定は?」
・・・こっちからは、後でメールします。

でも、事情のわからない普通の人には、そんなこと通用しませんね。
今でもシャント式の僕は、しゃべるとき片手で喉を押さえる必要があるので
残った片手で受話器を持っています。
メモを取ろうとすれば、ペンを持つその瞬間はしゃべれません。

すると、例によって、
「もしもし・・・」「聞こえてますか」 「もしも?し・・・」
僕の方は、「メモを取るからしばらく相槌は打てませんが
聞こえてますから、続けてしゃべってください・・・」と
言っているにも関わらず・・・です。やれやれ。


面と向かってしゃべっているときは
ウンウンとうなづくとか、手目で合図するとか、ゼスチャーで何とかなります。
テレビ電話なら同じ手が通用する・・・という事もあるのでしょうが
一般的にはまだまだ普及はしていません。

とりあえず、みんなの理解が先決ですね。
みんなは、声が出せないことが、すんなりとは理解&実感できないのです。
どうやって対応したら良いのか?見当が付かないのです。

たとえば、交差点で車椅子を押してあげるような親切な人でも
しゃべれない不便さ・障害・・・という事を理解するには時間が掛かります。

眼が見えない、耳が聞こえない(聾唖)という事は理解できても、
声帯がないから「しゃべれない」という事は、
障害者なのだと一般には余り理解されてはいません。
つまり「障害者」なのに、みんなは「障害者扱いしてくれない」・・・という事です。

実際、何百万人も居るんでっすよ!
まぁ僕自身、自分で障害者になるまでは、ちゃんと理解できないのはもちろん
そんな世界がどうなってるのか、全く実感できるどころか
そういう人たちの存在すら
日頃は気にかけてもいなかったのですから、大きなことは言えません。


たとえば、前述の相槌の替わりに受話器を叩いても構わないとか
声帯のない相手には、相槌がなくてもしゃべってくれるとかのルール

広く一般の人にも理解されれば良いのにな!と思うのは僕だけでしょうか?

お?い、公共広告機構か政府広報、民間のNPOでも良いから
声帯摘出による障害者の存在と、気の配り方をパブリシティしてくれませんか?

大体やね!(やしき たかじん風に)
何で障害者の俺が、見るからに元気そうなバァサンに席を譲らんからといって
なんで周りから白い眼で見られんとイカンのヤ!

2008/11/20/Thu 17:39:01  身体障害者/CM:2/TB:0/

§ しゃべれないと、外出が恐い!

声帯を摘出した手術の後は、当然の事ながら「全くしゃべれません」。

・・・というか、声帯そのものがないわけですから
「あー」 も 「うー」も言えない訳で、声そのものが出せない訳ですね・

考えて見てください。
口をガムテープで塞いだって「う?う?」くらいは音が出せます。
赤ん坊だって、ギャーギャー泣いたり、「あー」とか「うー」しゃべります。
犬や猫だって、「ワン」とか「にゃー」とか、コミュニケーションできます。

声帯がないという事は、しゃべれないだけではなく、
音声によるコミュニケーションが全く出来ない、という事なのです。

たとえばタクシーの中
運転手さんは前を見てますから、コミュニケーションはもっぱら声になります。
行く先を書いたメモなどを見せるのですが
乗車拒否こそされないものの、普通あまり良い顔はされません。
こちらがしゃべれないから、向こうも会話しない・・・
なんとなく気まずい感じで(向こうもそうでしょうが)目的地に近づきますが
「その角を曲がって」・・・とか、「その先で止めて」、「領収書・・・」など、
以前は、当たり前のように「指示していたこと」が出来なくなります。

たとえば、混んだ電車の中
「すみませ?ん」 「ここで降ります」 「痛い!足踏んでますよ」
カードを見せるような余裕は、ここには全くありません。
防衛法はただ。ひとつ
「混んでる電車には乗らないこと」しかありませんね。

はたまた、キオスクや百貨店、普通のお店の店頭。
「スミマセン・・」「これください」「幾らですか?」
「このパンの中身は?」「このシャツのSサイズ、色違いはありますか?」
・・・ごく普通に言ってることが一切出来なくなります。
行ける店は、コンビニとスーパーだけ?
マクドだって、ケンタだって、注文は普通は「しゃべる」のが前提です。
※メニューを指差す、メモを提示するなどの方法もありますが・・・。
億劫なので、自然と足が遠のくものですね。

極めつけは、倒れた時、事件にあったとき。
「ちょっと助けてください」 「すみません病院に連れてってください」
「気分が悪くなりました」 「救急車を呼んでください」・・・
しゃべれないという事は、助けが呼べない、困ってることが表現できない
つまり、少しくらい辛そうにしていても
「誰も助けてくれそうもない」と、十二分に予測できるという事です。

こんな言い方は適切な表現ではありませんが
目が不自由、手足が不自由など、
一目でそれとわかる身障者に対して、人は結構親切なものです。
でも、僕らは<見た目は普通の健常者>
喉に開いた呼吸口を見せたところで、それが
声帯がない=しゃべれない事とは直結しません。

つまり、緊急の場合を想定したカードを見せる
身振り手振りだけでコミュニケーションを試みる
メモ用紙に何か書いて知らせる・・・これ以外に、伝達手段はありません。
急に倒れた時、そんな余裕があるでしょうか?

強盗に襲われても、大声で助けを呼ぶことすら出来ません。
※とりあえず、防犯ベルなどをポケットに入れましょう!
※緊急時、受け入れてもらえる病院のカードと
 自分が声が出せないことを書き示したカードはいつもポケットに。
※そして、満員の電車や、人ごみには近づかないように自己防衛。

カラオケはもちろん、寄席に「行っても声を出しては笑えない。
お祭りや、花火大会、お花見、イベント、全部ダメ・・・。
ショッピングできない、電話できない、道も聞けない、タクシーも乗りにくい。
もちろん、夜道の一人歩きも、一人旅も大変に危険です。

私自身、手術後しばらくの間、しゃべれない時期は
昼間の外出は大変にもどかしく、夜暗い道を歩くのはホントに恐かった。

かくして人は、外に出なくなる。
家族や事情をよく知る友人としか会わなくなる。
自宅にこもって、世間から忘れられていって、
季節も流行も、たいした刺激もなく・・・時間だけが過ぎて行く。
寝たきりになっても知りませんよ。

とりあえず、どんな方法でもいいから、まずしゃべることです。

2008/10/31/Fri 03:11:53  身体障害者/CM:0/TB:0/

§ しゃべらないと、「車椅子」予備軍だぞ。

別に脅してるつもりはありません。

これが実に大変なんです。
外に出るのが億劫になりますから、自然と外出しなくなる。
家にいて、家族と顔をあわせている分には
しゃべらなくても、ご飯は出てくる。新聞はいつもの場所に置いてある。
洗濯物は畳んであるし、どうかすれば着替えも手伝ってくれる。
テレビはリモコンで動くし、お茶くらいは目線で注いでくれる・・・。

つまり、毎日一緒にいる家族と一緒なら
ほとんど「しゃべらなくても」以心伝心で何とかなる。
たまにコミュニケーションの必要があれば、これも筆談で何とかなる・・・。

外出しないから、ファッションや着る物にも気を使わなくなり
運動不足で、立ち居振る舞いも段々と億劫になってくる・・・。
※手術後、暫くは寝てたわけだから体力も落ちてるし
それでなくてもリハビリは辛い・・・。

辛いけど、やらなくちゃホントに体が固まって動かなくなる・・・。
行き着く先は車椅子生活。

そんな大袈裟な、と思うけど、ホントなんです。
僕と同期で入院してた患者さんが、実際にそうなっちゃったんです。

その方は、70歳前後で、悠々自適の年金生活。
奥様はよく気の付く、しゃんとした方で、万事ぬかりのないよく出来た奥様。
僕の方が一月ほど早く入院していたので、
電気式発声器の使い方を教えてあげようとしましたが
初めから諦めているのか、年下の人に教わるのが嫌なのか
ちっとも練習しようとなさらない・・・。

その後、外来で偶然お会いしましたが、なんと車椅子。
案の定、退院後3ヶ月も経つのに全くしゃべれなくて学ぼうともしていない。
奥様曰く「筆談でも苦労してるので、教えてやってくださいな・・・」
でも、ご本人は手を振るばかりで、
差し出した電気式発声器を受け取ろうともしない・・・。

それどころか、2ヶ月以上も同じフロアで毎日挨拶していた
僕の顔さえ忘れていらっしゃる。これはちょっとショック!

僕はといえば、仕事で現役復帰はもちろん
シャントを使って、しゃべったり笑ったり、自由に世間話をしている。

・・・電気でも、笛でも、シャントでも、何でもいいから
最初は辛くても、一旦声を出してしゃべれさえすれば、
後は、毎日しゃべってる事そのものが練習ですから
自然と声は大きく、発音は明瞭になり、「しゃべり」は上達してゆく。

これから手術をする皆さん、そして手術後まだ声の出ていない皆さん。
どんな方法でもいいから、まず声を出しみましょう。

食道発声の教官の方の中には
他のしゃべり方を先に憶えると、つい安易な方法に頼って
食道発声の訓練がおろそかになる・・・と、
他の発声法の練習を禁じる方もいらっしゃいますが
その気があれば、人はちゃんと学ぶもの。

とりあえずコミュニケーションの手段を取り戻すこと。
人としゃべる楽しさを取り戻し、その大切さを実感すること。
そちらも方が遙かに重要だと、私は思います。

2008/10/30/Thu 20:57:42  身体障害者/CM:0/TB:0/
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